今回の曲のタイトルは、「Stir」です。直訳すると、「かき混ぜる・揺り動かす」です。
アラバマ州モービル出身のラッパー、ライロ・ロドリゲス(Rylo Rodriguez)は、EMPIRE / Interscope Records所属。感情を揺さぶるリリックと南部トラップサウンドを軸にしたメロディック・ラップで注目を集め、2021年発表のアルバム『No More Love』でその名を広く知らしめた。「Stir」は、プロデューサー/ライターのヤング・アイシー(Yung Icey)との共同制作で生まれた楽曲で、ストリートライフと内なる葛藤を描いたサザン・ヒップホップ/メロディック・トラップの一曲。ライロならではの冷静かつ内省的な語り口が随所に光る作品だ。
【直訳のポイント】「Stir」は本来「かき混ぜる」「揺り動かす」を意味する動詞だが、この曲ではスラングとして「感情や場の空気をかき乱す」というニュアンスで使われている。直訳では伝わりにくい微妙なニュアンスを、できる限り日本語に落とし込むよう心がけた。
細かく調べて、できる限り注釈をつけて和訳しました。
※普段聞かないような難しい単語、普段とは違う用法の単語や熟語は、調べておきました。
歌詞の右上に表示される小さな数字をクリックorタップしていただけるとポップアップで注釈が見れます。
以下、和訳です。
Stir – Rylo Rodriguez
[Verse 1]
Grew up in the ‘jects1‘jects
[名・俗語]”projects”(公営住宅団地)の短縮形。主に貧困地区の公共集合住宅を指す。, only thing you promised a casket2casket
[名]棺(ひつぎ)。死を象徴する。 or a bunk3bunk
[名・俗語]刑務所の二段ベッドの一段。ここでは収監・服役を意味する。
団地で育った、約束されるのは棺桶か刑務所のベッドだけ
Gave lil bro his flowers4flowers
[名・イディオム]「生きているうちに花を贈る」→ 本人が健在のうちに称賛・感謝・敬意を示すこと。 ‘cause he ain’t tell, he got like sixty months
密告しなかったから弟分に敬意を示した、60ヶ月も食らったのに
He was two years in, I had took it back, ‘cause he had fucked a ponk5ponk
[名・俗語]”punk” の別表記。刑務所スラングで、弱い者・臆病者、または性的に従属する立場の人物を指す侮蔑語。
2年服役していたのに取り消した、ポンクと関係を持ったから
They was saying, “He lost his mind,” I don’t think he did, they was talkin’ ‘bout Lamont
「頭がおかしくなった」と言われてたが、俺はそう思わない、ラモントのことを話してたんだ
Kel got an elbow6elbow
[名・俗語]ポンド(pound)の記号”L”の語呂合わせから来た隠語。薬物1ポンド(約453g)を指す。, he had three strikes7three strikes
[法・俗語]「スリーストライク法」。重犯罪を3回犯した場合に長期または終身刑が科される米国の法律。, I wish he would’ve bond8bond
[法]保釈保証金(bail bond)のこと。「保釈金を払って釈放される」の意。
ケルは1ポンドの薬で捕まった、スリーストライク法もかかってた、保釈されてたらよかったのに
They kept shootin’ Lil J mama house up, that’s how he got his L9L
[名・俗語]”Loss”(敗北・喪失)の頭文字。ここでは収監や死など、取り返しのつかない敗北を指す。
リル・Jの母親の家に何度も銃撃があって、それであいつは負けを食らった
His family sick of divin’ on the floor, little sister ain’t even care
家族は床に伏せるのに疲れ果てて、妹なんてもう気にもしなかった
Facetimin’ with my cousin, he up the road10up the road
[句・俗語]「道の先(刑務所)に行っている」→ 服役中であることを遠回しに表す隠語。, they had made him cut his hair
いとことFaceTimeした、あいつは塀の中にいて、髪を切らされていた
You supposed to be in this big-ass house with us, but you in there
本当はこのでかい家に一緒にいるはずなのに、お前はそっちにいる
You ask me if I be goin’ to see your children, can’t lie11can’t lie
[句・AAVE]「嘘はつけない」→「正直なところ」「本当のことを言うと」という意味の口語的な前置き表現。, here and there
お前の子どもたちに会いに行くか聞いてくるけど、正直なところ、たまにしか行けてない
But I send your BM12BM
[名・俗語]Baby Mamaの略。自分の子どもを持つ元交際相手(主に母親)を指すスラング。 money every holiday to get them something to wear
でも俺はお前のベイビーマザーに毎回の休日に服代を送ってやってる
I don’t never wish jail upon no man, but I knew how Ty was livin’
誰かに刑務所に入ってほしいなんて思ったことはない、でもタイがどんな生き方をしてたかは分かってた
They whacked13whacked
[動・俗語]「強く叩く」が転じて「殺す」を意味するスラング。 him, he wasn’t even home a whole year, wish bro would’ve stayed in prison
奴らに殺られた、家に戻ってまだ一年も経ってなかった、あいつが刑務所にいればよかったのに
My uncle told on14told on
[句動詞]「密告する・チクる」を意味するイディオム。仲間の情報を警察や当局に流すこと。 Duke, he in Georgia but he ain’t get a day
俺の叔父はデュークを売った、今はジョージア州にいるのに一日も減刑されなかった
My lawyer say, “Lil Duke about to come home,” but he didn’t get a date15get a date
[句・俗語]刑務所用語で「出所日・釈放日が決定する」こと。
弁護士は「リル・デュークが出所しそうだ」って言ったけど、釈放日は決まらなかった
I cried like a hoe when they killed Tyrone, he tried to hit a play16hit a play
[句・俗語]「計画を実行する・一仕事やる」を意味するスラング。主に危険な取引や犯罪行為を指す。
タイロンが殺られた時みっともなく泣いた、あいつはひと仕事やろうとしてたのに
Ain’t get your letter, you say I was actin’ funny17actin’ funny
[句・AAVE]「おかしな行動をする」ではなく「よそよそしくふるまう・冷たくする」を意味するAAVEのイディオム。, but I ain’t Desi Banks18Desi Banks
[固・人名]アメリカの人気コメディアン。「俺はデジ・バンクスじゃない=ふざけているわけではない」という意味で使われる。
お前の手紙は届かなかった、俺がよそよそしくしてたって言うけど、俺はふざけてるわけじゃない
If a nigga take the feds19feds
[名・俗語]FBI など連邦法執行機関の総称。federalsの短縮形。 to trial, it always end bad
連邦事件を裁判に持ち込んだら、結果は必ず悪くなる
How I’m supposed to tell my bro his hoe been out here gettin’ dragged20gettin’ dragged
[句・俗語]SNSや街で公然と批判・侮辱されること。「引きずり回される」が転じて「ボロクソに言われる」を意味するスラング。?
兄弟の女が外でボロクソに言われてることをどうやって伝えればいいんだ?
Hope Skooby lawyer can find a mistake in the case, I’m just curious
スクービーの弁護士が裁判の手違いを見つけてくれるといいな、ただ気になってるだけだけど
Say21Say
[副・AAVE]文頭で「聞いた話では」「〜らしい」を意味するAAVEのイントロ表現。標準英語の命令形「言え」とは別物。 the feds22feds
[名・俗語]「federal agents」の短縮形。FBI・DEAなど米国連邦捜査機関の捜査官を指すスラング。 was lookin’ for him, it was Homeland Security23Homeland Security
[固有名詞]米国国土安全保障省(DHS)。テロ・密輸・組織犯罪などを管轄する大規模な連邦機関。
聞いた話じゃ連邦捜査官が彼を追ってたって、国土安全保障省まで動いてたらしい
They took a Patek24Patek
[固有名詞]パテック・フィリップ(Patek Philippe)。スイスの超高級腕時計ブランドで、富と地位の象徴としてヒップホップで頻繁に言及される。 off my wrist, put shackles25shackles
[名]手首・足首に嵌める金属製の拘束具。ここでは逮捕時の手錠を指す。 on my hand
手首からパテックを外され、代わりに手錠をはめられた
Had to turn myself in26turn myself in
[句動詞]「自首する」「警察に自ら出頭する」を意味するイディオム。 in my prime, I feel like Deion Sanders27Deion Sanders
[固有名詞]NFL・MLB両リーグで活躍した伝説的アスリート。「Prime Time(プライムタイム)」の異名を持つため、直前の「prime(全盛期)」と掛けている。
全盛期に自首しなきゃならなかった、まるでデイオン・サンダースみたいだ
JoJo locked up, doin’ twenty-five28doin’ twenty-five
[句・俗語]「25年の刑期を服役している」を意味する。「do time(服役する)」を応用した刑事スラング。, won’t tell how he on the Gram29the Gram
[名・俗語]Instagram(インスタグラム)の俗称。
JoJoは収監されて25年の刑を服役中、どうやってインスタに繋がってるかは誰にも言わない
People in his background get to rappin’30rappin’
[動・俗語]ここでは音楽ではなく「べらべら喋る・俺の名前を売りに使う」を意味する俗語用法。 ‘cause they know who I am
彼の周囲の連中は俺が誰か知ってるからって、得意げにべらべら喋り出す
My day one31day one
[名・俗語]「最初の日から一緒にいる仲間」→ 最古参の友人・幼なじみを指すスラング。 was talkin’ ‘bout me before he went to jail, fucked with my head32fucked with my head
[句・俗語]「頭をかき乱す」→ 裏切りや衝撃で精神的に深いダメージを与えることを意味するイディオム。
昔からの仲間が刑務所に入る前から俺の悪口を言ってた、頭が狂いそうだった
But I can’t let him sit without no lawyer, even after what he said
でも、あいつが何を言ったとしても、弁護士なしで放っておくことはできない
[Hook]
How GWAY33GWAY
[固有名詞]楽曲中で言及される人物のニックネーム・名前。 gon’ look at me?
GWAYの目に、俺はどう映るんだろう?
How the hell Ayesha34Ayesha
[固有名詞]楽曲中で言及される女性の名前。アーティストの身近な人物(パートナーや知人など)を指すと思われる。 gon’ look at me?
一体、アイーシャは俺のことをどんな目で見るんだ?
Made it through them35them
[代名詞・AAVE]標準英語の “those” に相当するAAVEの用法。「あの〜」の意。 drug busts36busts
[名・俗語]警察による家宅捜索・摘発・逮捕を指すスラング。”drug bust” で「麻薬摘発」。, look at me
あの麻薬摘発を潜り抜けた、この俺を見ろ
Know how the D.A.37D.A.
[略語]District Attorney(地方検事)の略。米国で起訴・訴追を担う検察官を指す。 gon’ look at me
地方検事が俺をどう見るか、わかるだろ
[Verse 2]
Remember waitin’ for trial for two years, it’s fucked up how they playin’38playin’
[動・俗語]「遊ぶ」→「人を弄ぶ・不公平に扱う」という意味のスラング。
裁判を2年も待たされたのを覚えてるか、あいつらのやり方はひどすぎる
The Way he go to sleep, he get a rag, tie a knife around his hand
そいつの寝方といえば、布切れでナイフを手に縛りつけるんだ
Know she be fuckin’ just when I call, pick up the phone for me
電話するといつも誰かとヤってるのに、それでも俺には出てくれる
(I was talkin’ to my bunkie39bunkie
[名・刑務所俚語]刑務所の二段ベッドを共有する同室者のこと。, he told me how his fiance had just wrote him)
(バンキーと話してたら、婚約者からちょうど手紙が届いたって言ってた)
Say his wife sent him a letter and sprayed perfume on it
妻が手紙を送ってきて、香水を吹きかけてあったと
Got a hang a bed spread on the wall, when you gotta take a shit
用を足すときはベッドカバーを壁に吊るして目隠しにしないといけない
Ain’t nun cool about it, and you a sucker40sucker
[名・俗語]弱虫・腰抜けを意味する侮蔑語。, you ain’t even take your lick41lick
[名・俗語]「一撃」→ 受けるべき制裁・報いを意味するストリートスラング。
それのどこもカッコよくない、お前は腰抜けだ、受けるべき報いも受けなかった
Always wanted to be like Lil Jermaine, he was spoiled as it get
いつもリル・ジャーメインみたいになりたかった、あいつは本当に甘やかされて育ったから
Saw him last month, he was at the store, he asked for eighty cents
先月そいつを見かけたら、店にいて80セント恵んでくれって言ってきた
When his girl cheated, he ain’t want to go to court, he say he sick
彼女に浮気されたのに、裁判には出たくないって、具合が悪いとか言い訳してた
Can’t believe bro facin’42facin’
[動・俗語]「facing」の短縮。「直面している」。ここでは刑事罰・長期刑を前にしているという文脈。 all that time43time
[名・俗語]「時間」→ 刑務所での服役期間。「do time(服役する)」と同じ用法。 and worried ‘bout a chick44chick
[名・俗語]女性を指すくだけた表現。
信じられない、あいつあんな長い刑期を前にして、女のことを心配してるなんて
[Hook]
How GWAY45GWAY
[固有名詞]楽曲内に登場する人物のニックネームと思われる固有名詞。 gon’ look at me?
GWAYは俺のことをどう見るんだ?
How the hell Ayesha46Ayesha
[固有名詞]アイーシャ・カリー(NBAスター、ステフィン・カリーの妻として知られる人物)を指す可能性がある。または身近な女性の固有名詞。 gon’ look at me?
アイーシャは一体、俺のことをどう見るんだ?
Made it through them drug busts47drug busts
[名詞・俗語]bustは「摘発・逮捕」を意味するスラング。drug bustで「麻薬摘発(警察による強制捜査・逮捕)」のこと。, look at me
麻薬摘発を乗り越えてきた、この俺を見ろ
Know how the D.A.48D.A.
[略語]District Attorney(地方検事)の略。米国の刑事司法制度において起訴権を持つ検察官。 gon’ look at me
地方検事が俺のことをどう見るか、わかってる
[Bridge]
Now the C.O.49C.O.
[略語]Correctional Officer(矯正施設の刑務官・看守)の略称。 gon’ look at me
今、刑務官が俺を見てくる
Give a fuck50give a fuck
[句・俗語]通常は否定形で「気にしない」の意で使われるが、ここでは肯定形で「本当に気になる・意識せざるを得ない」というニュアンス。 how the P.O.51P.O.
[略語]Probation Officer(保護観察官)の略称。仮釈放・執行猶予中の人物を監督する司法関係者。 gon’ look at me
保護観察官にどう見られるか、気にせずにはいられない
Cut his hair off, he got court52got court
[句・口語]「裁判の期日がある」の意。”have a court appearance”のインフォーマルな表現。 this week
髪を切った、今週に裁判があるから
Hope a nigga53a nigga
[名・AAVE]「あいつ」「そいつ」に相当するAAVEの代名詞的用法。特定の人物を指す。 change, ‘cause how your honor54your honor
[敬称・法律用語]英米の法廷で判事・裁判官に呼びかける際の敬称。「裁判長」「閣下」に相当。 gon’ look at me?
あいつが変わってくれることを願う、裁判官に俺がどう映るかがかかってるんだから
Writer(s): Rylo Rodriguez, Yung Icey
以上です、いかがでしたでしょうか!
以下に、ミュージックビデオ貼っておきます!ご覧ください!
よくある質問
「Stir」はどんな曲ですか?
「Stir」は、アラバマ州モービル出身のラッパー、ライロ・ロドリゲス(Rylo Rodriguez)がリリースしたトラックで、服役中の孤独・街の暴力・失った仲間への思いを、独特のメロディックなフロウで綴った作品です。タイトルの「stir」自体が英語スラングで「刑務所生活・服役」を意味しており、曲全体のテーマを一言で体現しています。Spotifyをはじめとするストリーミングプラットフォームで数百万回以上再生され、アメリカ南部のヒップホップシーンにおける彼の存在感をさらに高めた一曲として知られています。
「’jects」はどういう意味ですか?
「’jects」は「projects(プロジェクツ)」を縮めたストリートスラングで、アメリカ都市部にある低所得者向けの公営住宅団地を指します。正式には「housing projects」といい、貧困・犯罪・コミュニティの結束といった複雑な文脈がセットになっている言葉です。ライロ自身もそういった環境で育っており、歌詞に「’jects」が登場するたびに、彼のリアルな生い立ちや地元への深い愛着が伝わってきます。日本語に訳すなら「団地」や「公営住宅」が近いですが、アメリカの社会的背景が色濃く染み込んでいるため、カタカナで「プロジェクツ」と表記されることも多いです。
「casket」はどういう意味ですか?
「casket(キャスケット)」は日本語でいう「棺桶(ひつぎ)」のことです。ヒップホップの歌詞では、街の暴力で命を落とした友人や仲間への哀悼を表すときに頻繁に登場します。「Stir」の文脈では、単に死を描写するだけでなく、「自分もいつそちら側に行くかわからない」という緊張感と隣り合わせの日常を示す言葉として機能しています。重くてシリアスな単語ですが、ライロがこの言葉を使うとき、そこには悲しみだけでなく、生き残った者としての責任感や葛藤も込められています。
「bunk」はどういう意味ですか?
「bunk(バンク)」には大きく分けてふたつの意味があります。まず最もよく知られているのが「二段ベッド」という意味で、刑務所の独房に置かれた簡易的な寝台を指す場合に使われます。「服役」をテーマにした「Stir」では、この意味が特に響いてきます――薄暗いセルの中、固い二段ベッドで過ごす孤独な夜が目に浮かぶようです。もうひとつのスラングとして、「bunk」には「インチキ・偽物・質の悪いもの」という意味もあります。歌詞のどちらの文脈で使われているかを読み解くのも、翻訳ブログならではの面白さといえるでしょう。
関連リンク
Stir – Rylo Rodriguez (Official Video)
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【歌詞和訳】Neighborhood Starz – Rylo Rodriguez
【歌詞和訳】Born In the U.S.A. – Bruce Springsteen
【歌詞和訳】One Sweet Day – Mariah Carey & Boyz II Men
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