今回の曲のタイトルは、「Anxiety」です。直訳すると、「不安」です。
「Anxiety」は、フロリダ州タンパ出身のラッパー、Doechii(本名:Jaylah Ji’mya Hickmon)が2024年8月30日にリリースしたミックステープ『Alligator Bites Never Heal』に収録されています。同作は2025年2月に開催された第67回グラミー賞においてベスト・ラップ・アルバム賞を受賞し、DoechiiはTDE(Top Dawg Entertainment)所属のアーティストとして世界的な注目を集めました。この曲はGotye(2011年の全米No.1ヒット「Somebody That I Used to Know」)の楽曲をサンプリングしており、Gotye自身もルイス・ボンファのギター曲からサンプリングしていたことから、ライター欄にはGotye・Luiz Bonfáの名も連なっています。不安や孤独感といったメンタルヘルスをテーマに、Doechii自身の内面を赤裸々に綴ったヒップホップトラックです。
【直訳のポイント】「anxiety」は多くのサイトで「不安症」「パニック」など意訳されることもありますが、当ブログでは辞書通りの「不安」を採用しました。曲中では単なる漠然とした心配ではなく、日常生活を蝕むほどの強烈な焦りや恐怖感として描かれており、その重みをできる限り意識して訳しています。
細かく調べて、できる限り注釈をつけて和訳しました。
※普段聞かないような難しい単語、普段とは違う用法の単語や熟語は、調べておきました。
歌詞の右上に表示される小さな数字をクリックorタップしていただけるとポップアップで注釈が見れます。
以下、和訳です。
Anxiety – Doechii
[Verse 1]
Solo, no mojo1mojo
[名・俗語]魔力・性的魅力・自信・やる気などを指すスラング。ここでは「勢い」「ノリ」のニュアンス。
ひとり、ノリもなし
I bounce back2bounce back
[句動詞]「跳ね返る」→「立ち直る・復活する」を意味するイディオム。, no pogo
俺は立ち直る、ポゴスティックなしで
Unhappy, no homo3no homo
[句・俗語]直前の言葉が同性愛的に聞こえないよう打ち消すAAVEスラング。「そういう意味じゃない」に相当。
不満だけど、そういう意味じゃない
New brands, no logos
新しいブランド、ロゴはなし
Money on my jugular4jugular
[名]頸静脈。「money on my jugular」で「命綱にカネをかける」→ 金稼ぎが死活問題であることを示す比喩。, natural hustler
カネが命綱、生まれながらのハスラー
Think I need a smuggler up in Russia
ロシアで密輸業者でも必要かもな
You could be my butler, shine my cutla’5cutla’
[名]cutlass(カトラス・短刀)の語末を省略した発音表記。
お前は俺の執事になれ、刀を磨け
Shout out to Oyenda, that’s the guzzler6guzzler
[名・俗語]飲み物(特に酒)を大量に飲む人。「がぶ飲み野郎」。
Oyendaに感謝、あいつはがぶ飲みだ
Okay, next thing, my life is a wet dream7wet dream
[名・俗語]本来は「夢精」だが、ここでは「夢にまで見るほど最高の状況」を意味する比喩的用法。
さて次の話、俺の人生は夢のようだ
I call it a sex scene, the back is a nice tease8tease
[名・俗語]「じらし・焦らし」→ 欲求を煽りながら満足させないものや人を指す。
セックスシーンと呼んでる、後ろ姿が絶妙な焦らしだ
I tried to escape, my life is a X-rate9X-rate
[名・米俗語]アメリカの映画レーティング制度における成人向け最上位区分「X指定」のこと。次行の “sex tape” と意味的に連動した言葉遊びにもなっている。
逃げ出そうとした、でも俺の人生はX指定も同然
I’m sorry, a sex tape, you only get one take10take
[名・映像用語]映画・録音における「テイク(一回の収録)」の意。”tape” と韻を踏みながら、人生はやり直しが利かないという二重の意味を持つ。
悪い、これはセックステープ、テイクは一回きりだ
[Interlude]
Quiet on the set11set
[名・映像制作]映画・テレビの撮影現場(スタジオや野外ロケ地)のこと。「Quiet on the set」は撮影開始前に監督や助監督が全員に静粛を求める定型フレーズ。, please
セット内、静粛にお願いします
Rolling12Rolling
[動・映像制作]カメラが回り始める(録画開始)合図として使われる現場用語。「Camera rolling!」の略で、撮影スタート直前に発せられる掛け声。 “Anxiety”
「Anxiety」、カメラ回します
In three, two, one
三、二、一
[Refrain]
Anxiety, keep on tryin’ me13tryin’ me
[句・AAVE]「try+人」で「人の忍耐を試す・挑発する」の意。不安が自分を消耗させようとし続けるさまを表す。
不安よ、いつも私を試し続ける
I feel it quietly, tryna silence me, yeah
静かにそれを感じる、私を黙らせようとして
Anxiety, shake it off14shake it off
[句動詞]「振り払う」→ 不快な感情や状況から解放されること。 of me
不安よ、私から振り払って
Somebody’s watchin’ me, it’s my anxiety, yeah (Brrah)
誰かに見られてる気がする、それは私の不安なんだ(ブラー)
[Chorus]
Anxiety, anxiet— oh, I feel it tryin’ (Oh)
不安、不安——ああ、それが迫ってくるのを感じる(ああ)
Keep it tryin’, keep it tryin’, oh, I feel the silence (Oh)
それでも続く、続く——ああ、静寂を感じる(ああ)
Keep it quiet, keep it tired, oh, somebody’s watchin’ me (Ooh, la-da, woah)
静かに、疲れさせて——ああ、誰かが私を見ている(ウー、ラダ、ウォウ)
Anxiety, anxiet— oh, I feel anxiet— (Oh, oh, oh, oh)
不安、不安——ああ、不安を感じ——(ああ、ああ、ああ、ああ)
My anxiety, anxiet— oh, I feel it tryin’ (It’s my anxiety, can’t let it conquer me)
私の不安、不安——ああ、それが迫ってくるのを感じる(これは私の不安、征服させてはいけない)
Keep it tryin’, keep it tryin’, oh, I feel the silence (It’s my anxiety, gotta shake it off15shake off
[句動詞]「振り払う」→ 嫌なものや感情を手放す・脱け出すことを意味するイディオム。 of me)
それでも続く、続く——ああ、静寂を感じる(これは私の不安、振り払わなければ)
Keep it quiet, keep it quiet, oh, somebody’s watchin’ me (It’s my anxiety, can’t let it caution16caution
[動]通常「警告する」の意だが、ここでは「臆病にさせる・行動を躊躇わせる」という使役的な意で用いられた詩的表現。 me)
静かに、静かに——ああ、誰かが私を見ている(これは私の不安、躊躇わせてはいけない)
Anxiety, anxiet— oh, I feel anxiety (It’s my anxiety, gotta keep it off of me)
不安、不安——ああ、不安を感じる(これは私の不安、遠ざけ続けなければ)
Anxiety, anxiet— oh, I feel it tryin’
不安、不安——ああ、それが迫ってくるのを感じる
Keep it tryin’, keep it tryin’, oh, I feel the silence
それでも続く、続く——ああ、静寂を感じる
Keep it quiet, keep it quiet, oh, somebody’s watchin’ me
静かにして、静かにして、ああ、誰かが私を見ている
Anxiety, anxiet— oh, I feel anxiety
不安、不安——ああ、不安を感じる
[Verse 2]
Court order from Florider17Florider
[固有名詞・俗語]「Florida(フロリダ州)」の韻を踏んだ変形スペル。
フロリダからの裁判所命令
What’s in that clear blue water?
あの澄んだ青い水の中に何がある?
No limits, no borders
限界もなく、国境もない
What’s in that new world order?
新世界秩序の中に何がある?
Marco18Marco
[固有名詞・文化]アメリカのプールゲーム「マルコ・ポーロ」の呼びかけ。目を閉じた鬼が「マルコ!」と叫び、他の参加者が「ポーロ!」と返す遊び。直前の「clear blue water」と呼応する。 (Marco) Polo (Polo)
マルコ(マルコ)ポーロ(ポーロ)
Negro run from po-po19po-po
[名・AAVE俗語]「警察」を指すスラング。 (Po-po)
黒人が警察から逃げる
That blue light and that rojo20rojo
[名・スペイン語]スペイン語で「赤」の意。警察車両の赤青灯の「赤」を指す。 (Rojo)
あの青いライトとあの赤
[Interlude]
And it’s like
そしてまるで、
I get this tightness in my chest
胸が締め付けられるような感覚で
Like an elephant is standing on me
象に乗られているみたいに
And I just let it take over21take over
[句動詞]「乗っ取る・支配する」の意。”take”と”over”が組み合わさり、何かが完全に主導権を握ることを表すイディオム。
そのままそれに支配されるままにした
[Bridge]
Anxiety
不安が
Keeps on tryin’ me22tryin’ me
[句・AAVE]「try me」は「(人の)忍耐・限界を試す、挑発する」を意味するAAVEスラング。単純な「試みる」ではなく「じわじわ追い詰める」ニュアンス。
ずっと私を追い詰め続ける
Anxiety
不安が
Keeps on tryin’ me23tryin’ me
[句・AAVE]「try me」は「(人の)忍耐・限界を試す、挑発する」を意味するAAVEスラング。単純な「試みる」ではなく「じわじわ追い詰める」ニュアンス。, yeah
ずっと私を追い詰め続ける
[Chorus]
Anxiety, anxiet— oh, I feel it tryin’ (Ooh)
不安、不安— ああ、それが迫ってくるのを感じる(ウー)
Keep it tryin’, keep it tryin’, oh, I feel the silence
迫り続ける、迫り続ける、ああ、この静寂を感じる
Keep it quiet, keep it quiet, oh, somebody’s watchin’ me (Oh, it keeps on tryin’24tryin’
[動・俗語]「試す」→「try someone」で「人の忍耐を試す・精神的に追い詰める」を意味するイディオム。 me)
静かに、静かに、ああ、誰かが私を見ている(ああ、ずっと私を追い詰め続ける)
Anxiety, anxiet— oh, I feel anxiet— (It keeps on tryin’, t-tryin’, tryin’, oh)
不安、不安— ああ、不安を感じ—(追い詰め続ける、追い—、追い詰め、ああ)
My anxiety, it’s my anxiety, can’t shake it off25shake off
[句動詞]「振り落とす」→「(不快なものを)振り払う・解放される」を意味するイディオム。 of me (It’s my anxiety)
私の不安、私の不安、振り払えない(私の不安)
It’s my anxiety, gotta keep it off of me (Can’t shake it off of me)
私の不安、遠ざけなきゃ(振り払えない)
It’s my anxiety, can’t shake it off of me (Oh, somebody’s watchin’ me)
私の不安、振り払えない(ああ、誰かが私を見ている)
It’s my anxiety, gotta keep it off of me (Brrah)
私の不安、遠ざけなきゃ(ブラー)
[Outro]
Can’t shake it off26shake off
[句動詞]「振り払う」→ 嫌なものや感情を自分から取り除くことを意味するイディオム。 of me, shake, shake it off of me (Yeah)
振り払えない、私から、振り払えないんだ(イェー)
It’s my anxiety, gotta keep it off of me (Yeah)
これは私の不安——ずっと遠ざけ続けなきゃ(イェー)
Can’t shake it off27shake off
[句動詞]「振り払う」→ 嫌なものや感情を自分から取り除くことを意味するイディオム。 of me, shake, shake it off of me
振り払えない、私から、振り払えないんだ
It’s my anxiety, gotta shake it off28shake off
[句動詞]「振り払う」→ 嫌なものや感情を自分から取り除くことを意味するイディオム。 of me
これは私の不安——振り払わなきゃ
Me
私
Me
私
Writer(s): Doechii, Gotye, Luiz Bonfá
以上です、いかがでしたでしょうか!
以下に、ミュージックビデオ貼っておきます!ご覧ください!
よくある質問
「Anxiety」はどんな曲ですか?
「Anxiety」は、フロリダ州タンパ出身のラッパー・Doechii(ドーチー)が2024年にリリースしたミックステープ『Alligator Bites Never Heal』に収録された楽曲です。この作品はリリース直後から批評家・リスナー両方の間で高い評価を受け、ストリーミングプラットフォームで爆発的に再生数を伸ばしました。同ミックステープは2025年のグラミー賞「Best Rap Album」を受賞し、Doechiiは同部門を制した史上3人目の女性ラッパーとなりました。
「mojo」はどういう意味ですか?
「mojo(モジョ)」は、もともとアフリカ系アメリカ人の民間信仰に由来する言葉で、呪術的な「魔力」や「お守り」を意味していました。現代のスラングでは意味が広がり、「自分らしい輝き」「独特の魅力」「ノリやグルーヴ感」といったニュアンスで使われます。Doechiiの文脈では、自分自身の強さや女性としての存在感を取り戻すという意味合いが込められており、「I got my mojo back(自分の魔力を取り戻した)」のような使い方が典型的です。
「bounce back」はどういう意味ですか?
「bounce back(バウンス・バック)」は、「逆境から立ち直る」「どん底から復活する」という意味の口語表現です。ボールが床に当たって跳ね返る(bounce)イメージから生まれた言葉で、挫折・失恋・批判など、何らかのダメージを受けた後に力強く復調する様子を表します。ヒップホップ全般で頻出する表現で、アーティストとしての自信や生命力を誇示する場面でよく登場します。日本語に訳すなら「這い上がる」「ハネ返す」といった言葉が近いでしょう。
「no homo」はどういう意味ですか?
「no homo(ノー・ホモ)」は、1990〜2000年代のヒップホップシーンで広まったフレーズで、「直前に言ったことはゲイっぽい意味じゃないからな」と断りを入れるために使われていました。たとえば男性同士で「お前のこと愛してるよ、no homo」と言えば、同性愛的な意図を否定しつつ友情を表現するという使い方です。ただし現在はLGBTQ+コミュニティへの配慮から批判的な見方も強く、使用を避けるアーティストも増えています。Doechiiがこの表現を使う場合は、その文脈や意図を歌詞全体の流れの中で丁寧に読み解くことが大切です。
関連リンク
Anxiety – Doechii (Official Video)
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