今回の曲のタイトルは、「Snake」です。直訳すると、「ヘビ」です。
Lil Keedはアトランタ出身のラッパーで、本名はRaqhid Render。Young Thugが主宰するYoung Stoner Life(YSL)レーベルおよびAtlantic Recordsと契約し、2018年のミックステープ「Trapped on Cleveland」でシーンに名乗りを上げた。メロディアスなフロウと感情的なリリックを特徴とするメロトラップスタイルを持ち味とし、続く「Trapped on Cleveland 2」(2019年)もストリートで高い支持を獲得。「Snake」はKevin・Tim GomringerとPyrexがプロデュースした楽曲で、裏切り者や二枚舌の人間をヘビに例え、ストリートの怒りと不信感を鋭くぶつけた内容となっている。惜しくも2022年5月、22歳という若さでこの世を去った。
【直訳のポイント】タイトルの「Snake」は本来「ヘビ」だが、スラングでは「裏切り者」「信用できない人間」を意味する。歌詞中では後者のニュアンスが強いため、文脈に応じて「スネーク」と音訳する箇所と「裏切り者」と意訳する箇所を使い分けた。
細かく調べて、できる限り注釈をつけて和訳しました。
※普段聞かないような難しい単語、普段とは違う用法の単語や熟語は、調べておきました。
歌詞の右上に表示される小さな数字をクリックorタップしていただけるとポップアップで注釈が見れます。
以下、和訳です。
Snake – Lil Keed
[Intro]
Yeah, my boy Pyrex1Pyrex
[固有名詞・文化]パイレックス社製のガラス計量カップはクラック・コカインの精製に使われることで知られ、ヒップホップ・トラップ文化ではドラッグ製造やストリートライフの象徴として頻出する語。ここではラッパーの相棒のニックネームとしても機能している。 in this motherfucker2in this motherfucker
[句・AAVE俗語]直訳は「このクソ野郎の中に」だが、実際には「この場(この曲・この場所・この現場)に」という意味を強調するAAVEの定型表現。
そうだ、俺の相棒パイレックスがここにいるぜ
[Verse 1]
I was just thinkin’ ‘bout you
ちょうどお前のことを考えていた
Pop3Pop
[動・俗語]「ポンと弾く」→ 錠剤を口に放り込む・薬を飲む動作を指すスラング。 a Percocet4Percocet
[固有名詞]オキシコドンとアセトアミノフェンの合剤である処方鎮痛剤のブランド名。乱用・娯楽目的で使われることが多い。, get higher than a kite5higher than a kite
[慣用句]「凧より高く」→ 薬や酒でひどくハイになった状態を表すイディオム。
ペルコセットを飲んで、完全にキマる
Fuck your bitch6bitch
[名・俗語]「雌犬」→ AAVE・ヒップホップ文脈で女性(特に彼女や連れの女)を指すスラング。, get her ass out of sight
お前の女を抱いて、視界から消えさせろ
Came from the trenches7trenches
[名・俗語]「塹壕」→ 貧困街・危険な地元・過酷な環境を指すヒップホップスラング。, but I’m living nice
貧しい街の出身だが、今は豊かに生きている
Came for the riches, ain’t got time to fight
富を求めて来た、争う時間はない
Came for your ho8ho
[名・俗語]「hooker(売春婦)」の短縮形。AAVEで女性全般を指す蔑称スラングとしても使われる。, she wan’ spend the night
お前の女を連れに来た、彼女は一晩過ごしたがっている
I ain’t come alone, fire9fire
[名・俗語]「火」→ 銃・拳銃を指すスラング。 on my side
一人じゃない、銃を携えてる
No armor on, I’m not a knight
鎧は着ていない、俺は騎士じゃない
Nigga too sharp10sharp
[形・俗語]「鋭い」→ 抜け目ない・賢いという意味。直後のknife(ナイフ)との言葉遊びにもなっている。, nigga need a knife
俺は鋭すぎる、ナイフでも必要か
Drink it out a juice, I don’t need a Sprite11Sprite
[固有名詞]炭酸飲料のブランド名。ヒップホップ文化ではコデイン入りシロップと混ぜた薬物飲料「リーン」の定番割り材としても知られる。
ジュースから直接飲む、スプライトなんて要らない
Fuck ‘em by the twos, they both tryna ride12ride
[動・AAVE]「乗る」→ 成功者・有名人に便乗しようとすること。ここでは「俺に近づいてものにしようとする」の意。
ふたり同時にヤっちまう、どっちも俺に乗っかろうとしてるから
Then I ditch ‘em both, I ain’t even right13ain’t even right
[句・AAVE]「正しくさえない」→「自分でも最低だとわかってる」という自嘲的な自己評価を表す表現。
そのままふたりともほかして、俺ってまじで最低だな
Hightop Chanel14Hightop Chanel
[固有名詞]フランスの高級ブランドChanelが展開するハイトップシューズ。富とステータスの象徴としてヒップホップ歌詞に頻出する。, bitch, we drippin’15drippin’
[動・AAVE]「滴る」→ファッション・スタイルが完璧にキマっていることを示すスラング。名詞形「drip」はスウァグ・センスそのものを指す。 right
シャネルのハイトップ履いて、俺らのスタイルは完璧にキマってる
Young YSL16YSL
[固有名詞]①フランスの高級ブランド「Yves Saint Laurent(イヴ・サンローラン)」、またはYoung Thug率いる②レーベル「Young Stoner Life Records」の略称。ヒップホップ文脈では両方を掛けている場合が多い。, bitch, we livin’ life
ヤング・YSL、俺らは人生を謳歌してる
[Chorus]
Snake, snake, snake, snake
スネーク、スネーク、スネーク、スネーク
Snake, snake, snake, snake
スネーク、スネーク、スネーク、スネーク
[Verse 2]
I’m goin’ right in
俺はまっすぐ突き進む
And these pockets17pockets
[名・俗語]文字通り「ポケット」だが、ラップでは「財布の中身=金・財力」を指すスラング。, I’m rising
このカネも、どんどん上がってく
Just know that we tied in
俺たちがしっかりつながってるってわかってくれ
And that pussy, I dive right in
そのマンコに、真っ先に飛び込む
Before the license, I was driving
免許を取る前から俺は運転してた
Set ‘em up like a tent, finna get stretched18get stretched
[動・俗語]「引き伸ばされる」→ 殴り倒される・やられることを意味するAAVEスラング。直前の「テントのように張る」と同じ「引き伸ばす」イメージで使われている。
テントみたいに奴らを仕掛けて、ぶちのめされることになる
Just like Grinch19Grinch
[固・文化]ドクター・スースの絵本『グリンチ』(1957年)の主人公。クリスマスプレゼントを根こそぎ奪う悪役として知られ、ここでは「かっさらう者」の比喩として使われている。, takin’ that shit
グリンチみたいに、あれを全部かっさらう
When you get off the exit, you ain’t get stretched
出口で降りたとき、お前はやられなかった
We do it for…
俺たちがやるのは…
[Chorus]
Snake, snake, snake, snake
ヘビ、ヘビ、ヘビ、ヘビ
Snake, snake, snake, snake
ヘビ、ヘビ、ヘビ、ヘビ
[Verse 3]
They ain’t finna20finna
[副・AAVE]”fixing to” の短縮形。「〜するつもり/しようとしている」を意味するAAVEの助動詞表現。 post21post
[動・俗語]「ポストアップする」→ 場所に陣取る・見張りに立つ・姿を現すことを指すスラング。
あいつらには陣取る気すらない
I’m ballin’22ballin’
[動・俗語]「豪勢に生きる・派手に金を使う」を意味するスラング。高いレベルでプレーすることにも掛けている。, fuck a coach23coach
[名]ここでは飛行機のコーチ(エコノミー)クラスを指す。次行の “private”(プライベートジェット)と対比。スポーツのコーチではない。
俺は豪勢に生きてる、エコノミーなんてお断りだ
Flyin’ private, not coach
プライベートジェットで飛ぶ、エコノミーじゃない
Run this shit, no Colts24Colts
[固・NFL]インディアナポリス・コルツ(Indianapolis Colts)。NFLのフットボールチーム名。”run”(支配する)との語呂合わせで、チームの力を借りずに自分たちが場を制するという意を込める。
この場は俺たちが仕切る、コルツも要らない
Diamonds real froze25froze
[動・俗語]”frozen”(凍った)から転じた「アイスドアウト」表現。ダイヤモンドが光り輝いて氷のように見える状態を指すスラング。, nigga catch a cold
ダイヤがガチガチに輝いてる、近づいたら風邪ひくぞ
Nigga slang26slang
[動・AAVE]”sling”(投げる・扱う)のAAVE変形。ここでは銃(pole)を使う・振り回すことを意味する。 the pole27pole
[名・俗語]銃を指すストリートスラング。, do it for your bros
銃をぶっ放す、仲間のためにやれ
He like to do it for the camera, we’ll make you pose28pose
[動・俗語]カメラが好きなら強制的にポーズをとらせてやる、という脅迫的ニュアンス。意に反して屈辱的・危険な状況でポーズをとらされることを示す。
カメラの前でやるのが好きなら、こっちが強制的にポーズをとらせてやる
Get back scrambling29scrambling
[動・NFL用語]クォーターバックがポケット外に飛び出してフィールドを走り回ること。マイケル・ヴィックはこの能力で名を馳せた。ここでは必死に逃げ回る様子にも掛けている。, Michael Vick30Michael Vick
[固・NFL]元NFLクォーターバック(マイケル・ヴィック)。圧倒的な走力とスクランブル能力で知られるレジェンド選手。 mode
また逃げ回れ、マイケル・ヴィックばりにな
Aim, aim, drug31drug
[動]「薬で麻痺させる」の意。名詞ではなく動詞として使われており、薬物で痛みを消すことを指す。 pain
狙え、狙え、ドラッグで痛みを消せ
Aim, aim, stay in your lane32stay in your lane
[句・俗語]「自分のレーンにとどまれ」→ 余計なことに首を突っ込むな・自分の領域を超えるなという警告のイディオム。
狙え、狙え、自分の領域から出るな
Do it for…
〜のためにやれ…
[Chorus]
Snake33Snake
[名・俗語]本来「ヘビ」の意だが、俗語では「裏切り者・二枚舌の人物」を指す。, snake, snake, snake
裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者
Snake, snake, snake, snake
裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者
Writer(s): Kevin Gomringer, Tim Gomringer, Pyrex, Lil Keed
以上です、いかがでしたでしょうか!
以下に、ミュージックビデオ貼っておきます!ご覧ください!
よくある質問
「Snake」はどんな曲ですか?
「Snake」は、アトランタ出身のラッパー、リル・キード(本名:ラキード・レンダー)によるトラップ・ナンバーで、YSLレコード/300エンタテインメントからリリースされました。ヤング・サグ率いるYSLという”正統派アトランタ・トラップ”の看板レーベルらしく、重低音のビートに乗せて裏切り者(=蛇)への怒りとストリートでの自信をまくし立てる構成が特徴です。Spotifyをはじめとするストリーミング・プラットフォームで着実に再生数を積み上げ、南部ヒップホップ好きのリスナーから根強い支持を得ている一曲です。
「Pyrex」はどういう意味ですか?
「Pyrex(パイレックス)」はもともと、アメリカで広く普及している耐熱ガラスの食器ブランドの名前です。ただしヒップホップ、特にアトランタのトラップ文化では、コカインを加熱・精製する際に使う計量カップや容器の代名詞として定着しています。ストリートでの「調理」経験を語ることは、下積み時代の苦労やリアルな出自を示すシンボルであり、「俺はPyrexを握ってきた」という表現は単なる過去の告白ではなく、現在の成功をより際立たせるための”勲章”として機能しています。
「in this motherfucker」はどういう意味ですか?
直訳すると刺激的に聞こえますが、AAVE(アフリカ系アメリカ人英語)では「motherfucker」は罵倒語としてではなく、場所・状況・物事を強調するための”勢いワード”として使われます。「in this motherfucker」は「この場所で」「この状況の中で」という意味合いで、日本語に近い感覚で言えば「ここでマジで」「この舞台でしっかりと」くらいのニュアンスです。歌詞全体のテンションを上げ、リスナーに「今まさに何かが起きている」という臨場感を与えるのが主な役割です。
「Pop」はどういう意味ですか?
「Pop」はヒップホップで非常に多義的な単語ですが、文脈によって主に二つの意味で使われます。一つは「銃を撃つ(pop a shot)」という動詞的な使い方で、ストリートでの危険な状況を描写するシーンによく登場します。もう一つは「錠剤を飲む(pop a pill)」という用法で、リーン(コデイン入り咳止めシロップ)や鎮痛剤など、トラップ文化と結びついたドラッグ使用を指す場合があります。「Snake」の文脈では、どちらの意味でも緊張感と支配力を演出するキーワードとして機能しており、リル・キードが自分のリアルな生活をリスナーに突きつける場面で効果的に使われています。
関連リンク
Snake – Lil Keed (Official Video)
他の曲も和訳しています。よろしければどうぞ!
【歌詞和訳】Jiggle Jiggle – Duke & Jones & Louis Theroux
【歌詞和訳】Hold My Girl – George Ezra
【歌詞和訳】Mount Everest – Labrinth
【歌詞和訳】Rover – S1mba
【歌詞和訳】Softcore – The Neighbourhood