【歌詞和訳】It’s Tricky – Run-D.M.C.

今回の曲のタイトルは、「It’s Tricky」です。直訳すると、「それはやっかいなことだ」です。「Tricky」とは「一筋縄じゃいかない」「扱いにくい」といったニュアンスを持つ英単語で、日本語でも「トリッキー」とカタカナ表記されることがあります。ここでは、名声と隣り合わせの複雑な現実をひと言で言い表したタイトルとなっています。

Run-D.M.C.は、ニューヨーク州クイーンズ区ホリス出身のヒップホップグループで、Rev Run(ジョセフ・シモンズ)、D.M.C.(ダリル・マクダニエルズ)、Jam Master Jay(ジェイソン・ミゼル)の3人からなる。「It’s Tricky」は1987年にリリースされたシングルで、前年1986年に発表されたアルバム『Raising Hell』に収録されている。同アルバムはBillboard 200で最高3位を記録し、ヒップホップの商業的成功を世に知らしめた歴史的名盤として名高い。楽曲はプロデューサーのリック・ルービンが手がけ、ハードロックとラップを大胆に融合させた力強いサウンドが特徴。歌詞では、スターとなったラッパーたちを取り巻く誘惑や困難が、ユーモアを交えながらリアルに描かれている。

【直訳のポイント】「Tricky(トリッキー)」は「やっかいな」「一筋縄じゃいかない」という意味を持つ言葉です。この曲では、人気ラッパーである自分たちを取り巻くさまざまな誘惑や困難を指す言葉として使われています。

細かく調べて、できる限り注釈をつけて和訳しました。

※普段聞かないような難しい単語、普段とは違う用法の単語や熟語は、調べておきました。
歌詞の右上に表示される小さな数字をクリックorタップしていただけるとポップアップで注釈が見れます。

以下、和訳です。


It’s Tricky – Run-D.M.C.

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[Intro: Rev Run & DMC]
This speech is my recital, I think it’s very vital
このスピーチは俺のリサイタル、これが本当に大切なんだ

To rock1rock
[動・俗語]「岩・揺らす」ではなく、ライムやパフォーマンスを「決める・かます」意のAAVEスラング。
a rhyme that’s right on time, “It’s Tricky” is the title (Here we go)

ぴったりのタイミングでライムをかます、「It’s Tricky」がタイトルだ(さあ行くぞ)


[Chorus: Rev Run, DMC, & Both]
It’s tricky to rock2rock
[動・俗語]「岩」ではなく「格好よく決める・披露する」を意味するヒップホップスラング。
a rhyme, to rock a rhyme that’s right on time, it’s tricky

ライムを決めるのは難しい、ぴったりのタイミングでライムを決めるのは、難しいんだ

It’s tricky, tricky, tricky, tricky
難しい、難しい、難しい、難しい

It’s tricky to rock3rock
[動・俗語]「岩」ではなく「格好よく決める・披露する」を意味するヒップホップスラング。
a rhyme, to rock a rhyme that’s right on time, it’s tricky

ライムを決めるのは難しい、ぴったりのタイミングでライムを決めるのは、難しいんだ

Tr-tr-tr-tricky, tricky, tricky
ト・ト・ト・トリッキー、トリッキー、トリッキー





[Verse 1: DMC & Rev Run]
I met this little girlie, her hair was kind of curly
ちっちゃな女の子に出会った、髪が少しカールしていた

Went to her house and bust her out4bust her out
[句動・俗語]「連れ出す」が転じ、「関係を持つ・征服する」を意味するスラング。
, I had to leave real early

彼女の家に行って関係を持ったが、かなり早く出なければならなかった

These girls are really sleazy5sleazy
[形・俗語]道徳観が低く、節操がない・だらしないことを指す。
, all they just say is, “Please me”

こういう女たちは本当にだらしなく、口を開けば「気持ちよくして」ばかり

Or spend some time and rock a rhyme6rock a rhyme
[句・俗語]hip-hopの定番表現。rock=「情熱的に披露する」、rhyme=「ラップの韻・詞」。合わせて「ラップをかます」の意。
, I said, “It’s not that easy”

または時間を使ってラップしてみせろと言う、「そんな簡単じゃない」と俺は答えた


[Chorus: DMC, Rev Run, & Both]
It’s tricky to rock7rock
[動・俗語]本来「岩」だが、ヒップホップ用語では「(スタイルよく)披露する・決める」の意。「rock a rhyme」でライムを鮮やかに決めること。
a rhyme, to rock a rhyme that’s right on time, it’s tricky (How is it D8D
[固有名詞]Run-DMCのメンバー、DMC(Darryl McDaniels)のニックネーム。
?)

ライムを決めるのはトリッキー、タイミングよくライムを決めるのはトリッキー(どうだ、Dよ?)

It’s tricky, tricky, tricky, tricky
トリッキー、トリッキー、トリッキー、トリッキー

It’s tricky to rock a rhyme, to rock a rhyme that’s right on time, it’s tricky
ライムを決めるのはトリッキー、タイミングよくライムを決めるのはトリッキー

Tricky, tricky, tricky
トリッキー、トリッキー、トリッキー





[Verse 2: DMC, Rev Run, & Both]
In New York, the people talk and try to make us rhyme9rhyme
[動・俗語]本来「韻を踏む」の意だが、ヒップホップ文化では「ラップする・パフォーマンスする」を意味するスラング。

ニューヨークでは人々が騒ぎ立て、俺たちに歌わせようとする

They really hawk10hawk
[動・俗語]本来「タカ」または「行商する」の意だが、ここでは「鋭い目でじろじろ見る・つきまとう」の意のスラング。
, but we just walk because we have no time

あいつらはじろじろ見てくるが、俺たちはただ立ち去るだけ——付き合う暇はない

And in the city, it’s a pity ‘cause we just can’t hide
そしてこの街では、残念なことに俺たちはどこにも隠れられない

Tinted windows don’t mean nothin’, they know who’s inside
スモークガラスも意味がない、あいつらには中に誰がいるかわかってしまう


[Chorus: DMC, Rev Run, & Both]
It’s tricky to rock11rock
[動・俗語]「岩」「ロック」が元義だが、ヒップホップ・AAVEでは「スタイリッシュにこなす・決める・披露する」の意で使われる。
a rhyme, to rock a rhyme that’s right on time, it’s tricky (How is it D?)

ライムをかますのは一筋縄じゃいかない、ジャストなタイミングでライムをかます——それが難しいんだ(どうだ、D?)

Tricky, tricky, tricky, tricky
トリッキー、トリッキー、トリッキー、トリッキー

It’s tricky to rock12rock
[動・俗語]「岩」「ロック」が元義だが、ヒップホップ・AAVEでは「スタイリッシュにこなす・決める・披露する」の意で使われる。
a rhyme, to rock a rhyme that’s right on time, it’s tricky

ライムをかますのは一筋縄じゃいかない、ジャストなタイミングでライムをかます——それが難しいんだ

Tricky, tricky, tricky, tricky, huh
トリッキー、トリッキー、トリッキー、トリッキー、ハッ


[Verse 3: DMC & Rev Run]
When I wake up, people take up13take up
[句動詞]「占める・費やす」の意。ここでは時間を「奪い取る」ニュアンス。
mostly all of my time

目が覚めると、みんながほとんどすべての俺の時間を奪っていく

I’m not singin’, phone keep ringin’ ‘cause I make up14make up
[句動詞]「作る・創作する」の意。”make up a rhyme”=韻を踏んだ歌詞を作ること。
a rhyme

歌ってるわけじゃない、韻を踏む曲を作るから電話が鳴り止まない

I’m not braggin’, people naggin’ ‘cause they think I’m a star
自慢してるんじゃない、スターだと思われてるから周りがうるさく言ってくる

Always tearin’15tearin’
[動・俗語]「引き裂く」→「酷評する・けなす」の転義。ここではファッションを批判する意。
what I’m wearin’, I think they’re goin’ too far

俺の服装をいつもけなして、やりすぎだと思う

A girl named Carol follows Darryl every gig16gig
[名・俗語]ミュージシャンが行うライブや公演のこと。
we play

キャロルという女の子が、俺たちの出演するライブのたびにダリルの後をついて回る

Then D dissed17dissed
[動・AAVE]”disrespect”の短縮・過去形。侮辱する・けなす意。
her and dismissed her, now she’s jockin’18jockin’
[動・俗語]誰かに熱を上げて追いかけ回すことを示すAAVEスラング。
Jay

そしてDが彼女を馬鹿にして追い払ったら、今度はジェイに熱を上げている

I ain’t lyin’, girls be cryin’ ‘cause I’m on TV
嘘じゃない、テレビに出てるせいで女の子たちが泣いてばかりいる

They even bother my poor father ‘cause he’s down with19down with
[句・AAVE]「〜と仲間である・〜に関わっている」の意。抗議スローガン「down with X=打倒X」とは逆の用法。
me

俺の仲間だからって、かわいそうな父さんまで迷惑をかけられてる





[Chorus: DMC, Rev Run, & Both]
It’s tricky to rock20rock
[動・俗語]「石」ではなく「自信を持って巧みに披露する・決める」を意味するヒップホップ/AAVE由来の用法。
a rhyme, to rock a rhyme that’s right on time, it’s tricky (How is it?)

ライムをキメるのは難しい、ジャストなタイミングでライムをキメるのは難しい(どうだ?)

Tricky, tricky, tricky, tricky
トリッキー、トリッキー、トリッキー、トリッキー

It’s tricky to rock a rhyme, to rock a rhyme that’s right on time, it’s tricky
ライムをキメるのは難しい、ジャストなタイミングでライムをキメるのは難しい

Tr-tr-tr-tr-tricky, tr-tr-tr-tr-tr-tr-tr
ト-ト-ト-ト-トリッキー、ト-ト-ト-ト-ト-ト-ト


[Outro: DMC, Rev Run, & Both]
We are not thugs21thugs
[名・俗語]「凶悪な犯罪者・ギャング」を意味するスラング。
, we don’t use drugs, but you assume on your own

俺たちはギャングじゃない、ドラッグもやらない、でもお前は勝手にそう決めつける

They offer coke22coke
[名・俗語]コカイン(cocaine)の俗称。
and lots of dope23dope
[名・俗語]麻薬・違法薬物全般を指すスラング。
, but we just leave it alone

コカインやらドラッグやら勧めてくるやつらがいるが、俺たちはただ距離を置く

It’s like that, y’all24y’all
[代・AAVE]「you all(あなたたち全員)」の短縮形。南部英語・AAVEで広く使われる二人称複数。
, y’all, but we don’t quit

そういうことなんだ、みんな、でも俺たちは諦めない

You keep on rock shock25rock shock
[句・俗語]「rock(圧倒する・揺さぶる)」と「shock(衝撃を与える)」を掛け合わせたヒップホップ的表現。このパフォーマンスに衝撃を受け続ける様を示す。
‘cause this is it

これが本物だから、お前らは衝撃を受け続けるしかない



Writer(s): D.M.C., Jam Master Jay, Rev Run, Rick Rubin

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以上です、いかがでしたでしょうか!

以下に、ミュージックビデオ貼っておきます!ご覧ください!

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よくある質問

「It’s Tricky」はどんな曲ですか?

「It’s Tricky」は、ニューヨーク出身のヒップホップグループRun-D.M.C.が1986年にリリースしたアルバム『Raising Hell』に収録された楽曲で、同年シングルとしても発売されました。全米ビルボードHot 100では最高21位を記録し、イギリスでも26位にランクインするなど国際的な成功を収めました。その後も2001年のスノーボードゲーム『SSX tricky』への起用をきっかけに新世代のファンを獲得し、現在もSpotifyなどのストリーミングサービスでヒップホップの古典として世界中のプレイリストに居場所を守り続けています。

タイトルの「Tricky(トリッキー)」という言葉には、どんな意味が込められているのですか?

英語の「tricky」には「難しい・やっかいな」という意味と「ずる賢い・巧みな」という意味が同時に存在します。歌詞の中でRun-D.M.C.は、有名になったことで降りかかるさまざまな”めんどくさい状況”——お金目当てで近づいてくる女性、業界での駆け引き、プライベートの消滅——をすべて「tricky」という一語で表現しています。つまりこのタイトルは「ラッパーとして生きることの複雑さ」を一言に凝縮したダブルミーニングになっており、言葉の多層性こそがこの曲最大の言語的妙味と言えるでしょう。

曲の冒頭から流れる印象的なギターリフは、どこから来ているのですか?

あのキャッチーなギターリフは、1979年にザ・ナック(The Knack)がリリースしたロックの大ヒット曲「My Sharona」からのサンプリングです。ロックのリフをそのままヒップホップのビートに乗せるという大胆な手法は、当時のジャンルの壁を一気に溶かすものでした。Run-D.M.C.はこの曲の前年にもエアロスミスと「Walk This Way」を共同制作しており、ロックとラップの垣根を意識的に壊し続けたパイオニアとして音楽史に刻まれています。

歌詞に登場する女性への警戒心の描写は、どのような文化的背景から来ているのですか?

1980年代のニューヨークで急速に商業化が進んだヒップホップシーンでは、有名ラッパーに近づく「グルーピー文化」が現実の問題として語られていました。Run-D.M.C.はその経験をストリートの言葉で正直に歌い、真剣に音楽に向き合うことの難しさを訴えました。英語学習の観点からも興味深く、歌詞には”fly”(かっこいい)、”def”(最高だ)、”fresh”(イケてる)といった1980年代ヒップホップ特有のスラングが随所に登場します。これらは現代ではほとんど使われない表現ですが、当時のストリートカルチャーと言語の空気感を体感できる、まさに生きた教材です。

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関連リンク

It’s Tricky – Run-D.M.C. (Official Video)

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