今回の曲のタイトルは、「Virtual Insanity」です。直訳すると、「仮想の狂気」です。
ジャミロクワイは、1992年にロンドンで結成されたイギリスのアシッド・ジャズ/ファンクバンドで、ボーカリストのジェイ・ケイを中心に活動しています。「Virtual Insanity」は、ジェイ・ケイとギタリストのトビー・スミスが共同で書き下ろし、1996年にリリースされたシングルで、同年発売のアルバム『Travelling Without Moving』に収録されています。イギリスのシングルチャートでは最高3位を記録し、斬新な映像表現が世界中で話題を呼んだミュージックビデオは、1997年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでビデオ・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。テクノロジーの急速な進歩がもたらす人間性の喪失と環境破壊への警鐘をテーマに掲げた、アシッド・ジャズを代表する名曲です。
【直訳のポイント】「virtual」という言葉は「仮想の・バーチャルな」だけでなく「事実上の」という意味も持つ多義語です。この曲では現代のテクノロジー社会に蔓延する狂気を指すニュアンスを込め、「仮想」と訳しました。
細かく調べて、できる限り注釈をつけて和訳しました。
※普段聞かないような難しい単語、普段とは違う用法の単語や熟語は、調べておきました。
歌詞の右上に表示される小さな数字をクリックorタップしていただけるとポップアップで注釈が見れます。
以下、和訳です。
Virtual Insanity – Jamiroquai
[Intro]
Ooh yeah, oh
ああ、そうさ、おお
What we’re livin’ in?
俺たちはいったい何の中で生きてるんだ?
Let me tell ya
話してやろう
[Verse 1]
It is a wonder man can eat at all1at all
[副・強調]否定文では「全く(~ない)」だが、肯定の驚き・疑問の文脈では「そもそも」「一体」の意味を添える強調表現。
人がそもそも食べていられること自体、不思議でならない
When things are big that should be small
小さくあるべきものが大きく膨れ上がっているのに
Who can tell what magic spells we’ll be doin’ for us?
私たちが自分たちのためにどんな魔法を使うことになるのか、誰に分かるというのか?
And I’m givin’ all my love to this world, only to be told2only to be told
[構文]「only to +動詞原形」は「~したものの、結局(予期せず)~されるだけだった」という逆接・結果を表す構文。
この世界に愛を全て注いでいるのに、言われることといえば
I can’t see, I can’t breathe, no more will we be
見えない、息もできない、もう私たちは存在しない
And nothing’s going to change the way we live
私たちの生き方を変えるものは何もない
‘Cause we can always take, but never give
いつでも奪うことはできても、与えることは決してしないから
And now that things are changin’ for the worse3for the worse
[慣用句]「悪い方向へ・悪化して」の意を表す定型句。, see
今や状況は悪化しつつある、分かるだろう
Woah, it’s a crazy world we’re livin’ in
おお、なんとおかしな世界に私たちは生きているのだろう
And I just can’t see that half of us immersed in sin
私たちの半分が罪にどっぷり浸かっているなんて、どうしても理解できない
Is all we have to give these
これだけが、私たちが与えられるすべて
[Chorus]
Futures made of virtual insanity4virtual insanity
[名詞句・造語]「仮想の(デジタルの)狂気」と「実質的な狂気」を掛けた造語。テクノロジーに支配された世界の異常さを表す。
仮想の狂気から作られた未来
Now, always seem to be governed5governed
[動・過去分詞]govern(統治する・支配する)の過去分詞形。ここでは「〜に支配・左右される」の意。 by this love we have
今も変わらず、私たちが持つこの愛によって支配されているように思える
For useless twisting6twisting
[動名詞・比喩]本来「ねじる・曲げる」の意だが、ここでは技術の「歪曲・悪用・操作」を指す比喩表現。 of our new technology
新しいテクノロジーを無意味に歪め続けることのために
Oh, now there is no sound, for we all live underground
ああ、今や音すらない、私たちは皆、地下に暮らしているのだから
[Verse 2]
And I’m thinkin’, what a mess we’re in
思うんだ、俺たちは何てひどい状況にいるんだろう
Hard to know where to begin
どこから手をつければいいのかもわからない
If I could slip7slip
[動・イディオム]本来「滑る」だが、ここでは「〜から抜け出す・逃れる」の意。”slip one’s bonds”(束縛から解き放たれる)という慣用表現に基づく用法。 the sickly ties that earthly man has made
この世の人間が作り出した、病んだ縛りから抜け出せたなら
And now every mother can choose the colour of her child
今や、どの母親も自分の子の肌の色を選ぶことができる
That’s not nature’s way
そんなのは自然の摂理じゃない
Well, that’s what they said yesterday
まあ、それが昨日まで言われていたことだけど
There’s nothin’ left to do but pray
祈る以外に、もう何もできることはない
I think it’s time I found a new religion
もう新しい信仰を探す時が来たと思う
Woah, it’s so insane
ああ、何て狂ってるんだ
To synthesize another strain8strain
[名・生物]「緊張・重圧」の意味が一般的だが、生物学では「株・系統」(細菌・ウイルス・生物の遺伝的変種)を指す専門語。ここでは遺伝子操作の文脈で使用。
また別の株を合成するなんて
There’s something in these futures that we have to veto9veto
[動・政治用語]ラテン語 “vetō”(我は禁ずる)に由来。名詞「拒否権」として有名だが、ここでは動詞で「拒否する・阻止する」の意。
これらの未来の中には、私たちが阻止しなければならない何かがある
[Chorus]
Futures made of virtual10virtual
[形・多義語]①「仮想の・デジタルの」②「事実上の・ほとんど〜も同然の」という二重の意味を持つ。この曲ではテクノロジーがもたらす狂気を両義的に表す。 insanity
バーチャルな狂気で形づくられた未来
Now always seem to be governed by this love we have
今やいつも、私たちが持つこの愛によって支配されているように見える
For useless twisting11twisting
[動名詞・比喩]「ねじること」→「歪める・悪用する」という比喩的用法。技術を本来の目的から捻じ曲げて使うことを指す。 of our new technology
新たなテクノロジーを無意味にねじ曲げることへの愛に
Oh, now there is no sound, for12for
[接・文語]接続詞として「なぜなら〜だから」を意味する文語的用法。前置詞の “for” とは異なる。 we all live underground, woah
ああ、今や音もない、私たちは皆、地下に生きているのだから
[Bridge]
Now there is no sound
今はもう音がない
If we all live underground
僕たちが皆、地下で生きるなら
And now it’s virtual insanity
そして今、これは仮想の狂気だ
Forget your virtual reality
バーチャルリアリティなんて忘れろ
Oh, there’s nothing so bad
ああ、これほどひどいものはない
As a meddlin’13meddlin’
[形・口語]meddle(「干渉する、おせっかいをする」)の現在分詞 meddling の口語的短縮形。 man
余計な口を出す男ほど
Oh yeah, I know, yeah
ああそうさ、わかってる
Take it to14take it to
[句動・慣用]「それを〜へ持っていく」→ ここでは「その熱量・気持ちをダンスフロアへぶつけよう」という意味の慣用句。 the dance floor
ダンスフロアで弾けよう
[Interlude]
Ooh
ウー
I know I can’t go on15go on
[句動詞]「進む」→「続ける・先へ進み続ける」を意味するイディオム。
もう続けられないとわかってる
[Verse 3]
Ooh, of this virtual insanity16insanity
[名]「正気でないこと」→ 狂気・精神的錯乱を指す語。 we’re living in
ああ、僕らが生きているこのヴァーチャルな狂気
Has got to change, yeah
変わらなければならない、そうだ
Things will never be the same
もう何も元には戻らない
And I can’t go on
そして僕はもう続けられない
While we’re livin’ in
僕らが生きている間は
Oh, oh, virtual insanity
ああ、ヴァーチャルな狂気よ
Oh, this world
ああ、この世界は
Has got to change
変わらなければならない
‘Cause I just, I just can’t keep goin’ on
だってもう、ただ続けていけないんだ
In this virtual, virtual insanity
このヴァーチャルな、ヴァーチャルな狂気の中では
That we’re livin’ in, that we’re livin’ in
僕らが生きているこの世界に、僕らが生きているこの世界に
And that virtual insanity is what is17is what is
[句・哲学的表現]「今ある現実・存在するもの」を指す表現。”it is what it is”(そういうものだ)から転じた言い回しで、「バーチャルな狂気こそが現実だ」というニュアンス。, yeah
そしてそのバーチャルな狂気こそが、今の現実なんだ、そうさ
Ooh
ウー
[Chorus]
Futures made of virtual insanity
バーチャルな狂気から作られた未来
Now always seem to be governed by this love we have
今や常に、私たちが抱くこの愛に支配されているようで
For useless twisting18twisting
[動名詞・比喩]本来「ねじること」を意味するが、ここでは新技術を「歪める・誤用する・都合よく曲げること」を指す比喩的表現。 of our new technology
新しいテクノロジーを無意味に歪め続けることへの
Oh, now there is no sound, for we all live underground, oh
ああ、今や音も消え去った、みんなが地下で暮らしているから
Futures made of, now, virtual insanity
バーチャルな狂気から作られた未来——今や
Now we all, we seem to be governed by a love
今や私たちみんなが、ある愛に支配されているようだ
For this useless twisting19twisting
[動名詞・比喩]本来「ねじること」を意味するが、ここでは新技術を「歪める・誤用する・都合よく曲げること」を指す比喩的表現。 of our new technology
この新しいテクノロジーを無意味に歪めることへの愛に
And now there is no sound, for we all live underground
そして今、音も消え、みんなが地下で生きているから
Yes, we do, oh
ああ、本当にそうなんだ
[Outro]
Oh, now this life that we live in (Virtual insanity)
ああ、今この僕たちが生きる人生(ヴァーチャル・インサニティ)
It’s all goin’ wrong20going wrong
[句動詞]「間違った方向へ進む」→「すべてが狂っていく・うまくいかなくなる」という意。, and
すべてが狂っていく、そして
Out of the window21out of the window
[慣用句]「窓の外へ」→「消え去る・失われてしまう」ことを表すイディオム。 (Livin’ in), you know (Virtual insanity)
すべては消え去っていく(生きている)、そうだろう(ヴァーチャル・インサニティ)
There, there is nothin’ worse than (Livin’ in)
これ以上ひどいものはない(生きている)
A meddling22meddling
[形]「余計な口出しをする・他人事に首を突っ込む」という意味の形容詞。 man (Virtual insanity)
余計な口出しをする男(ヴァーチャル・インサニティ)
There is nothing worse than (Livin’ in)
これ以上ひどいものはない(生きている)
A foolish man (Virtual insanity)
愚かな男(ヴァーチャル・インサニティ)
Yeah
イェー
Virtual insanity is what we’re livin’ in, yeah
僕たちが生きているのはヴァーチャル・インサニティの世界、イェー
Well, it’s alright now
まあ、今はそれでいいんだ
Writer(s): Jay Kay, Toby Smith
以上です、いかがでしたでしょうか!
以下に、ミュージックビデオ貼っておきます!ご覧ください!
よくある質問
「Virtual Insanity」はどんな曲ですか?
「Virtual Insanity」は、イギリスのファンクバンド・ジャミロクワイが1996年8月にリリースしたシングルで、同年発売のアルバム『Travelling Without Moving』からの先行シングルです。テクノロジーの急速な進化と、それに翻弄される現代社会の「狂気」を批判的に描いた歌詞が特徴で、イギリスのシングルチャートでは最高3位を記録しました。床が動いているように見える視覚トリックを駆使したミュージックビデオも大きな話題を呼び、1997年のMTVビデオ・ミュージック・アワードでは「ビデオ・オブ・ザ・イヤー」を含む4部門を受賞しています。
「”at all”」はどういう意味ですか?
“at all”は否定文の末尾に添えて「まったく〜ない」「これっぽっちも〜ない」と否定のニュアンスをぐっと強める表現です。たとえば”I don’t understand at all”なら「まったくわからない」となります。この曲の歌詞では、社会が進歩しているはずなのに人々の生活が少しも良くなっていないという怒りや失望感を強調するために使われており、ただの”not”よりもはるかに感情的な重みが感じられます。日本語で言えば「全然」や「ちっとも」に近いイメージで覚えると自然です。
「”only to be told”」はどういう意味ですか?
“only to be told”は「〜したものの、結局〜と言われるだけだった」という意味で、努力や期待が報われずに終わるときの落胆・徒労感を表す表現です。”only to+動詞の原形”の形が基本で、「せっかく〜したのに、その結果〜になるだけだった」というニュアンスになります。たとえば”She waited for hours only to be told the concert was cancelled”なら「何時間も待ったのに、コンサートが中止だと告げられるだけだった」となります。歌詞の中では、変化を訴えようとしても社会にはね返されてしまう無力感がこの一フレーズにぎゅっと凝縮されています。
「”for the worse”」はどういう意味ですか?
“for the worse”は「悪い方向へ」「悪化する形で」という意味のイディオムで、”change for the worse”(悪化する)や”take a turn for the worse”(事態が悪い方に転じる)のように使います。対義語は”for the better”(より良い方向へ)で、セットで覚えておくと英語の幅がぐっと広がります。「Virtual Insanity」の歌詞では、テクノロジーの発展によって世界が便利になるどころかむしろ人間性が失われていく、という曲全体のテーマを象徴するキーフレーズとして機能しており、ジェイ・ケイの皮肉と怒りが込められた一言です。
関連リンク
Virtual Insanity – Jamiroquai (Official Video)
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【歌詞和訳】Don’t Know Why – Norah Jones
【歌詞和訳】Sugar Baby Love – The Rubettes
【歌詞和訳】Heart of Glass – Blondie
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